次第に近くに住む姉の家に寝泊まりすることが多くなっていった。姉は早くに宗教を通じて知り合った男と結婚し、専業主婦として二人の子供を育てている。

長女らしく自分の意見、生き様が完璧なものと信じており、幸恵に会うたびに入信を勧める。

「水商売なんていつまでも出来るものじゃないでしょう。私はあなたの不幸が見ていられないのよ。あなたにも幸せになってもらいたいの。信者にいい人はいくらでもいて、いつでも紹介するから帰っていらっしゃい」

会うたびにこう言われ続けることに辟易とし「何よ、水商売の女は不幸なの? お父ちゃんのことを忘れたの? 私は男に依存して生きていきたくない」などと反論したくなるのを抑えることにも疲れてきた頃、母親が癌に侵されていることがわかった。

健康診断などとは無縁で働き続けたのだろう、助かる見込みはほぼ無いほど進行していた。母親が死んだらもう故郷には帰らないだろう。

かといって三十五歳になろうとしている自分は、一流のお店のホステスとしては限界だとわかっている。自分でお店を持つ気持ちは無く、準備もしてこなかった。サポートしてくれるようなパパもいない。

このまま歳を取りホステスをやっていけなくなったら自分はどうなるのだろう。

そんなことを考えると暗くなり落ち込むので考えないようにしているが、いずれ現実味を帯びてくるだろうこともわかっている。

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次回更新は8月16日(金)、20時の予定です。

 

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