「そうですよ。2百万も出せば、幾らでもいると聞きましたよ」
「それもそうかもしれないな。20年分の給料にも相当する金額だろうからな」
「殺りましょう。こんな大事な時期に手前のことばかり考えやがった」
「竹之下、まぁ待て。危険と引き換えにするには相手が小者すぎるなぁ」
昼前になって、佐久が帰ってきた。
重い足音を立てながら、階段を上ってきた。社長室に入るや否や
「社長、困りました」
佐久は今にも消え入りそうな声で言った。
「君が困ったことを聞いてもしようがない。どうだったか順を追って、詳しく話してくれ」
「今まで通り、手形の割引はどうしてできないのですか、と聞きました」
「誰に聞いたのだ」
「融資担当の古賀さんです」
「支店長に、会って話してはいないのか」
「すみません、お会いしていません」
「お前、支店長から言われたのだろう。支店長に言わなくてどうする!」
相変わらずだな、言いやすい人にしか会わない、会えない。体を張って交渉なんかできないな。これじゃだめだ。佐久を行かせたのが間違いだった。
「まぁ、いい。それで、古賀さんは何と言った?」
「割引は融資なのです、割引くということは新しい融資をするということなのです、と言うのです」
「それで君は何と言った?」
「そんなことは、初めて聞きました。今まで通りしてもらわないと困ります、と言いました」
「それで」