光に照らされる選手たちと共に、成し遂げた快挙を自分事として分かち合う人間がいる一方で、また別の場所では、この快挙が多くの人たちに称えられるべく、大会運営にぬかりないように、と見守る技術委員の責任者。

朝から走り回り、時に汗を拭い、同じフェンシングを愛する1人として喜びを感じながらも、自らが果たす役割に頭を巡らせ、次の工程を考え、早く移動しないと、と少なからぬ焦りを抱いていた女性たち。

そんなすべての光景に目と気と心を配りながら、この前代未聞の五輪で尽力してくれたボランティアたちにも「この瞬間が見えるように」と、ほんの少し、密かにセキュリティエリアを広げた、〝スポーツマネージャー〟として大会運営を担った1人の女性。

それぞれが、各々の場所で見て、ビジョンを描き、携わり、奔走しながら、手探りの中、つくりあげた東京五輪。

招致から開催決定に至った2013年9月7日から、本来開催予定だった2020年から一年の延期を経て、ようやく開催された2021年、夏。

史上初の金メダルは確かな快挙だ。

だがそこには、眩い光の中だけでは語られることのない、〝作り手〟たちの、いくつもの物語があった。