第三章 望みどおりの人生

「週刊新聞って、ゴシップ紙なの?」

「新聞にもよるわよ」

「告発しているのはこの二人だけ? 第一、第二工場の女工からも、そうした話が出てるの?」

「ううん。第一、第二はいまでも操業してるでしょう。虐待されてるなんて嘘ついても、すぐバレるわよ。第三工場は女工たちがほとんど亡くなってしまったから、いくらでも嘘が言えるのよ。助かった社員たちにしても、かわいそうな元女工が涙ながらに訴えてることは、否定しにくいでしょ。それに彼女たちが、自分たちはつらい思いをしてたんだって言ったら、それはある意味では、真実になってしまうし……」

「二人とも、なぜ嘘をつくの?」

鈴花はあっさり言った。

「お金をもらってるんでしょうね。それに城屋からも、お金をふんだくろうとしてるんでしょう。もっとも、由香李は吹き込まれたことをペラペラしゃべってるうちに、それがほんとうだと思い込んでるのかも。ミホの方は、悲劇のヒロインとしてちやほやされるのが、気持ちいいんでしょう」

「……誰かが裏で糸を引いているのね。城屋のライバル会社かしら?」

「あの事故を利用して、式風(しきかぜ)首相を陥(おとしい)れようとする動きがあるのよ。それに『告壇』も梁葦って人も関わってて、大張り切りなのよ」

「首相!? なぜそこまで話が飛ぶの」