八.硝酸態窒素

(何が違うのだろう?)と山川が思案しているところへ、内燃がやってきた。

「よぉ、馬鹿に熱心だなぁ」

「土を調べていたんかい? 何か分かったかい?」

「中渡牧場の土とは、明らかに違うってことは分かったんですが……」

「どうしてこんなに違うのか、土が違うこととシバムギの多さには関係があるのかどうなのか、どうやって調べていったらいいんですかね?」

「そうさなぁ。せっかく中渡牧場の土もサンプリングしたんだから、土の分析をしてみるのも一つの手かなぁ」と内燃は言いながら、水産クラブが今、熱くなっている分析実験について語った。

「河川水の硝酸態窒素の分析ですか……」

内燃の話を一通り聞き終えると山川はつぶやいた。

「まあ、牛が増えると河川水の電気伝導度が上がる。電気伝導度が上がっているってことは硝酸態窒素が上がっているってことだなぁ」

「やっぱり、俺らがよ、一生懸命撒いた肥料が無駄になって、川に流れているってことでないかい?」

「そうすると、土の硝酸態窒素に、何か違いがあるかもしれませんね。でも、どうやって測定するんですか?」

「ちょっと俺にも分からんな。佐伯先生は分かるかもしれんな。行ってみるかい」

内燃の言葉に、山川は調査機材を片付け始めた。