第一章 嫁姑奮戦記

翌日はまたおむつに手を突っ込み大騒ぎ、本人は自分の汚い手を平気で眺めている。

晩になるとがぜん元気になり、手すりを持って起き上がりベッドから降りようとする。

手すりは紐でしっかり結んであるが、夜にはそれを解こうと必死だ。

これで脚が自由に動けるようになったら、もうお手上げだ。全く皮肉な話だが。

術後四日頃から車椅子が使用出来るようになり、リハビリも始まる。

昼間は車椅子に座らせ、廊下、ロビー、屋上庭園などに連れて行き、なるべく眠らせないようにするが、思惑通りにはいかず眠ってばかり。いつになったら夜眠れるようになるのやら。

この頃からまたご近所の方たちがぼつぼつお見舞いに来てくださる。いつものように丁寧にお礼を言い、相手に合わせて話している。

昼と夜ではまるでジキル博士とハイド氏だ。あまりにも妄想がひどく眠らないので、精神科の診察を受ける。睡眠薬をいただくが、たまに朝まで眠ることもあるし、朝から眠ることも、全く一日中眠らないこともある。

先生もこの一定しない薬の効果に戸惑っておられ、私たち家族もこれにはずっと悩まされる。

脚の回復は順調にいっているようだ。ただ勝手に動き回らないように一層の注意が必要になってくる。