おじいちゃんはちゃんと生きていて一緒に家に居ると言うと、舅が死んで隣のベッドに寝かされていたのに生きてるのと不思議そうに言う。

聞いているこっちのほうが薄気味悪くなってくる。それに舅が病室に通っているむき出しの大きな配管に吸い込まれて行くので、必死に引っ張ったとも言う。

「考えてごらん、そんなはずないでしょ」と管を指さして言うと、不思議がり、
「やっぱりうちおかしいんやろか」と言う。それと猿が鈴なりになって壁にへばりついていたとか、他にもありえない物が見えたり聞こえたりしたというのだ。

煙草を取り上げられたと聞いていたので、禁煙による禁断症状ではなかろうかとふと思った。以前、映画でアルコール依存症の人のそのようなシーンを見たことがある。

「おばあちゃん、きっと煙草をやめたから禁断症状が出て変なものが見えたり聞こえたりするんやわ。そのうち治るわ」と言うと、「そうかもしれんな。うち気がおかしくなったか思うて心配したけど」とまともな受け答えをする。

一応安心して帰ったが、翌朝本人が突然帰って来た。どうやら無断で抜け出したらしく、病院から電話がある。なだめすかして病院へ連れて行く。

道々おかしなことを言うので事実と違うと言うと、やっぱりうちおかしいなと言うので、煙草やめたせいだから、そのうち治るからと言うとそうやなと納得した様子である。

その頃私もパートで働いていたので、終わって四時過ぎに行くが、看護婦さんにお聞きすると昨夜も幻覚がひどく全く寝ていないようだと言われる。禁煙のせいではと言ってみると、それはないと否定される。取り上げても勝手に買って吸うし、個室でも隠していたのを吸っているらしいとのこと。危険なためカーテン等も外してある。

翌日姑を訪ねると変わりない様子だが前日と同様おかしなことばかり言う。家の話などを言って聞かせると全く普通に会話している。

ところが、翌日の午後になって再び手提げ袋だけ下げて帰って来る。病院に電話すると、当院では扱いかねるので引き取ってもらいたいと言われる。

自分の家以外に住んだこともないし、他人の家に泊まったこともない人だから他所に来て不安のためパニックになったのか。それとも年のせいか。

不思議なことに肝心の胃の症状はすっかり治って手術の必要もなくなった。

【前回の記事を読む】病院内で錯乱による異常な言動を繰り返し、家に帰りたがる姑。これから始まる悪夢の幕開けとなった…

次回更新は7月15日(月)、20時の予定です。

 

【イチオシ記事】東京にいるはずの妻がなぜか金沢で事故死…「妻はどうして金沢にいたのだろうか?」残された不可解な謎

【注目記事】離婚したDV夫に遭遇。なぜいまだに近くに住んでいる? 私たちの家が見えるスーパーになぜわざわざ来る?