一段落して、夫に電話をすると事の次第に驚きながらも周囲を気遣ってか、そうか、とにかく帰りに寄るからと言って切るが、夫の落胆ぶりが電話の向こうから伝わって来る。

一週間の入院予定が三ヶ月、思わぬ事態の展開に我々家族のショックは大きかった。

骨折だけだったら救いもあるが錯乱による異常な言動を見ていると、何だか絶望的な気持ちになる。

今日からは当分泊まり込みになるだろう。錯乱がいつまで続くか予想も出来ないが、一両日中に治るとは思えない。絶えず額を触り点滴の手を動かすので目が離せない。

揚句の果てに、「何でこんなとこに居るの。はよ帰ろ。ベッドから起こして」と言う。

骨折しているから無理と言っても聞いていないのか、理解出来ないのか、忘れるのか三分ともたない。

夕方になると妄想は一層きつくなる。夫が勤めの帰り立ち寄ると、お帰りと陽気に言う。夫に状態を話す。夫は仕事が忙しいうえにややこしい問題を抱え、最近気分が落ち込み気味だ。この事態が追い討ちをかけなければよいが。

姑一人が陽気に勝手なことを喋り、揚句には天井にパンが並んでいるなど言い出す。

またか。夫も私も、八年前の病院脱走騒動を思い出し、出るはため息ばかり。

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次回更新は7月14日(日)、20時の予定です。

 

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