第一章 夢の留学

二度目の短期留学

この羅府テレフォンガイドに掲載されている弁護士事務所に私が後々お世話になることになるとはこの時点では全く想像だにできませんでした。陽介の一か月にわたる短期留学も滞りなく最終日を迎え、この日は課外授業という名目で、近くのブエナパークにあるナッツベリーファームへ行ったようです。

子供に人気のスヌーピーの公式テーマパークであるナッツベリーファーム(Knott's Berry Farm)は世界で最初に作られた元祖テーマパークで、その魅力は、可愛いキャラクターだけではありません。

同園を有名にしているのは、マニアをうならせる絶叫系ライド。のどかでほのぼのとした雰囲気と思いきや、絶叫ライドがずらりと並んでいるのです。

もともとベリー農園を営んでいたナッツ夫妻は、新種であるボイセンベリーの栽培に成功し、発売したところ大人気となりました。
そして夫人が開いたレストランが大盛況となって、連日行列ができるほどになりました。

長い列に並んで待っているお客さんを飽きさせないために提供したエンターテインメントが、アトラクションだったのです。

帰ってくる時間に合わせて迎えに行った私は、あまり過激なアトラクションは得意ではない陽介が、辟易した表情でいるのを見て、今日一日の内容を慮ったのでした。

今回の滞在中の最も印象的な出来事は女子サッカーのワールドカップ・ドイツ大会で、なでしこジャパンが決勝に進出してアメリカと優勝をかけて争ったことです。
二〇一一年七月十七日、この日は日曜日だったので部屋で息子と二人で、リアルタイムで決勝の模様を見ていました。

普段はコンピューターに向かいっぱなしでテレビはめったに見ない息子も世紀の一戦ということで、スポーツ大好き人間の私と一緒にテレビにかじりついて応援していました。

当然放送はアメリカのテレビ局なのでアメリカチームにかなり肩入れした実況になっていましたが、結果はご存知のように澤選手の大活躍で日本チームが見事初優勝を果たしました。

震災に打ちひしがれていた東北地方を含め、日本全国に感動と勇気を届けたのは言うまでもありません。
遠く異国の地で慣れない言語や習慣に悪戦苦闘していた我々も大いなる勇気をいただいた気がしました。