「一人で来たのか。よく来られたな」
「もう高校生だもの」
「ちょっと見ない間に大きくなったな」
孝介は娘の姿に女を感じたことで、内心戸惑っていた。
自分の目の少し下に由布子の髪の毛がある。
「一六〇センチ超えた」
「そうか……」
伸び盛りなのだ。体が大きくなるように、気持ちの中にもさまざまな変化が訪れているに違いない。孝介一人が実家に戻ったこと、美智子と由布子が東京に残ったこと。
一応は話し合って決めたことになっているが、なぜ帰ってきたのかと娘の由布子に問い詰められたら言葉がない。結局、みんなが少しずつ気持ちを抑えたことは事実だ。
「母さんは元気か?」
こくんと頭を動かした様子は、言葉では表しきれないたくさんのものを抱えていると告げていた。
助手席に由布子を乗せて帰途についた。
雲がきれいとつぶやく由布子の声で、突然よし子を思った。助手席に乗るといつも雲がきれいと言った。孝さんとドライブするのが一番楽しいと……俺はかなり混乱しているなと孝介は自分に言い聞かせる。
東京の学校がイヤになったか、母親と諍いをしたかで、家出でもしてきたのかと心配したが、そういうことでもないようだ。