うわさ

それぞれの苦悩

孝介たちの農家のグループはホテルと契約して毎朝交替で野菜の販売をしている。

車で来る人はトランクに詰めていくが、東京からの送迎バスで来る客は小分けにした方が買いやすい。そんな工夫もみんなで話し合って決めていった。

ホテルのレストランで使う野菜も納めるので、洋食に使う新しい野菜の開発も手がけている。

その日も孝介は空になった野菜の箱を軽トラに積んで帰路についた。

国道に出ると駅からのバスが着いたところだった。夏休みに入って家族連れも増え、活気のある風景が続く。降りた人々がそれぞれ近辺のホテルに散ってゆく。

夕方までは時間がある。客はチェックインしてから、温泉や散歩など楽しむのだろう。年配のグループ客は賑やかだ。このごろは年配の夫婦連れをよく見かけるようになった。バラけた客たちの行く先がまとまるまで孝介は車を止めて待っていた。

バスを降りて遠くの山を眺めている、一人動かない姿があった。まだ少女の姿なのに、なんと伸びやかなことか。細い肩、すらりと伸びた腰から脚の線。十代で、もう女の美しさを備えているのだ。

振り向いてこちらに歩いてきた。

高校生になった娘の由布子だった。

トラックの運転席から降り立ったのが父親と気づいた。

安堵と懐かしさと、いろんな感情を込めて孝介を見つめた。笑顔になるか、泣き顔になるかの境目だった。