第一章 浩、狙われる!
やはり、正面ドアから出るのは絶対避けるべきだ!
必ず見張っているように思う……そうだ! 確か下の部屋は未だ入居者が決まっていなかった筈だ。せめて下の階から上手く抜け出られたら、と決断し準備を始めた。
ガムテープ、ロープ、ビニール手袋を用意し、金づち、ドライバーをリュックの表のポケットへ入れ、リュックを手に持ってベランダへ出た。サッシを閉めると直ぐ非常時の脱出口を塞いでいる蓋を持ち上げた。
蓋は簡単に開いて、下の階のベランダが見え、ロープを使ってリュックを先に下ろした。
忘れ物が無いか確認し、急いでキャップを被ってスパクロのスリムダウンジャケットのチャックを首まで締めると、脱出口を掴んでゆっくり身体を降ろした。
降り切る直前に頭に載せた脱出口の蓋が、上手く塞がっているかの確認を終えると下のベランダへそっと降りた。
少しドサッと音がしたが気になるほどでもない……。
浩は、直ぐリュックからビニール手袋を出し、ガムテープをサッシのクレッセント部分に何枚か貼り付け、そこを金づちで軽く叩いて割った。
割れた隙間からドライバーを差し込んでクレッセントを解錠し部屋の中へ入った。直ぐサッシを締め、両手にリュックと靴を持って急いで出入口へ向かい、ドアを開けて暗闇の中へ滑り出た。
外廊下の壁より頭が出ないように気を付けながら、先の非常階段までそっと歩き、静かに一階へ降りて行った。
一階へ降り切る手前の踊り場の所で、出口を奴が見ているのは間違いないだろう。と思い、踊り場の壁を乗り越え、建物基礎のコンクリートに足を掛けて降り立った。
直ぐリュックを背負い、裏の出入口から人が行きかう道路の方へ歩き出した。