さっき自分に向けられた乱暴な言葉をぐっと飲み込んで、僕はだいちゃんにそう声をかけた。

やっとまた皆で遊べるようになって、でも何度もその機会はあったのに、だいちゃんだけは今まで来たことがなくて、僕はそれがずっと気になっていた。

今度は逆に僕がだいちゃんをのけ者にしているみたいで、嫌だったんだ。結局はだいちゃんがいない方が平和だということに皆が気付いて、何となく皆だいちゃんを避けるようになっていたんだけど、でもそれは本当の解決じゃないような気がしていた。

「ねぇ、だいちゃんも一緒に行こう」

「うるさい! お前なんかとだれが遊ぶか!」

だいちゃんは、どうして僕だけに突っかかってくるのだろう。皆の前で拒絶される恥ずかしさに、ボールを持った僕の手にぐっと力が入った。

「じゃあ、いいよ」

そう言ってだいちゃんに背を向けて教室から出ようとした時、だいちゃんは、さらに僕に向かって大声で言ったんだ。

「お前、いっつも妹と外で遊んでるの知ってんだぞ! 地面に絵なんか書いて、ガキみたいな遊びして、バカだ! お前の妹もバカだ!」

「ぼくの妹はバカじゃない!」

はじかれたように僕はだいちゃんに向かっていった。ボールを放り投げて頭ごとだいちゃんのお腹に突っ込んで、そうしてはずみで倒れただいちゃんの体の上に馬乗りになった。皆が勉強をする教室の中で、僕らはとうとう喧嘩になってしまった。

こういう時は体の大きな子の方が有利だ。僕はすぐにだいちゃんに押し倒され、反対に上に乗られてしまった。それでも僕も負けてはいなかった。思い切りだいちゃんの腕に嚙み付いた。

「痛い痛いっ!」

逃げようとだいちゃんが体を起こして離れたスキを狙い、もう一度、僕はだいちゃんの体に思い切りぶつかっていった。

教壇の上に置いてあった花瓶が割れたのと、女子たちが呼びに行った美春先生が教室に勢いよく入って来たのは、ほとんど同時だった。