とある渓谷(戦いの決着後)
「シン!」
戦いを終え、満身創痍になって戻ってきたシンに、ユウは走り寄る。
「だ、大丈夫?」
「おう。」
「・・・・・・・アイツは?」
「倒した。」
「・・・・・・凄い。・・・・・さすがだね、シン。」
「死ぬかと思ったがな。」
シンの心は落ち着いており、いつもの調子に戻っていた。
(あの「感覚」はいったい・・・・・・。)
「シン。」
(なんか・・・・心地良かったな・・・・。)
「シン。」
(自分を中心に・・・・・・世界が都合良く回っている感じがした・・・・・・・。)
「シン。」
(もう一度・・・・・・あの「感覚」を・・・・・・。)
「シン!」
「・・・・っ!」
耳元で名前を呼ばれ、物思いにふけっていた思考が覚める。
「どうしたの? ・・・・・・・やっぱり、どこか体の具合が悪いんじゃ・・・・・・。」
「なんでもねぇ、大丈夫だ。」
「ほんとうに?」
「ほんとうだ。」
「ならいいけど。」
「・・・・・・・・・・・・」
「強かった? ・・・・・・あの魔物。」
「強かった。」
「シンがそこまで言うなんてね・・・・・・はじめてなんじゃない?」
「これまで出会ってきた奴の中では、間違いなく一番だ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「また戦いてぇな・・・・・・ああいう奴と。」
「ふふっ。」
「・・・? ・・・・・なにかおかしかったか?」
「シン、凄い嬉しそう。」
「・・・・・え。」
「そんな表情のシン、久しぶりに見たよ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「やっと、自分が楽しいと思えることに・・・・・巡り逢えたんだね。」
「・・・・・・・・・・・・」
「僕の勘だけど、これからどんどん増えていくよ・・・・・・そういう楽しいこと。」
「ああ。」
たとえシンが、危うい欲望を抱いていたとしても・・・・・「シンが笑顔になるならそれでいい」・・・・・そんなふうに考えるユウであった。
【前回の記事を読む】「四足歩行の生きた恐竜の化石」の討伐で生きるか死ぬかの瀬戸際に本能が目覚め…「!!」