今年(二〇〇四年)イチローは262本のヒットを放った。打数は704打数である。したがって打率は3割7分2厘、アメリカンリーグの首位打者だった。

それではイチローが、今季4割を打つためにはあと何本ヒットが必要だったのか。打数をそのままにすれば、後20本必要だったのである。つまり282本打たないと4割には到達しないのである。

ファンは簡単に、然も無責任に次の目標は4割だと言うが、年間162試合(ただ単に試合数が多ければよいというものではない)という限られた枠の中で、これを成し遂げるのは容易なことではない。

大リーグでは過去六十三年もの長い間、日本ではプロ野球史上、4割打者が一人も出現していない理由がここにある。

今後イチローが4割を打つためにはいくつかの条件が必要である。

その一つがフォアボールである。年間704打数(リーグ最多)は余りにも多すぎる。先頭打者の宿命ではあるが、優れた動体視力を持つイチローの選球眼をもってすれば、フォアボールはまだまだ増やすことは可能である。

今季イチローが4割に到達するためには、ヒットもさることながらフォアボールを基準に考えれば、あと49個必要であった。つまり、49個の凡打の代わりにフォアボールを選んだとすると、655打数262安打で丁度4割になる。

イチローはさりげなく「ファンは私が打つところを見に来てくれている。フォアボールで歩くところを見に来てくれているのではない」と言う。

イチローはイチローで自分のプロ理念をもっている。ファンはこのことを兎や角言えない。プロとはそういうものであることを我々も認識しなければならない。

フォアボールさえ増やせばということはイチロー自身百も承知している。

あとは更に内野安打を増やすことと、勿論ヒットが増えればなお更良い。

足が速く、左打ちで、固め打ちができることなどの条件は、既にイチローには揃っている。

最後に、近年最も怖いのはプレッシャーだと言われている。これはその時にならないと自覚できない厄介なものだ。

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