絵本選びのこと

ただ、絵本のリストの上位に上がっているものでも、実際に子どもたちの前で読み聞かせをしてみないと、その良さが分からないものもある。

たとえば、色がとてもシンプルだったり、内容が難しそうに思えたり、長いものだったり。読むのを諦めそうになったこともある。けれども、やっぱりこの絵本は、子どもたちにとって大切な本なのだな、と思った絵本がたくさんある。

あるいは、比較的新しいものだが、その絵本の世界が素敵すぎて子どもたちにどうしても読みたくなったものもある。もちろん、この時のおはなし会も大成功だった。その中のいくつかを選んでお話ししたい。

『三びきのやぎのがらがらどん』

ノルウェーの昔話 絵:マーシャ・ブラウン 訳:せたていじ 

出版社:福音館書店 初版年月日:1965年7月1日

対象年齢:読んであげるなら4歳から、自分で読むなら小学低学年から

この絵本は、図書室をはじめるきっかけとなった俵万智さんの新聞のコラムの中に出てきた絵本だ。俵万智さんにとって『三びきのやぎのがらがらどん』はお気に入りの絵本だったそうだ。3歳の頃、まるごと暗唱していた一冊というのだから、相当お気に入りだったのだろう。

どんなところがお気に入りだったのだろう。コラムにはそのことについて何も書かれていなかった。俵万智さんはどんなことを感じていたのだろう。

実際に絵本を読んで知りたいと思った。この絵本は長く読み継がれているものでもある。あとは練習するだけだ。

ただ……この絵本は見た目があまり華やかではない。何色も色は使われているが暗めの色合いだ。子どもたちは喜んでくれるのだろうか。そんなことを思いながら練習をした。

そして、はじめてのおはなし会で『三びきのやぎのがらがらどん』を読んだ。少し緊張しながら読んだこの絵本は、私にとっても大切な一冊となった。見た目が華やかでないとか、色合いが暗いとか、そんなことは関係なかった。

この絵本は北欧民話がもとになっている翻訳絵本だ。登場するのは三びきのやぎだ。小さいやぎも、中くらいのやぎも、大きいやぎも、三びきともみんな「がらがらどん」という名前だ。三びきは食べ物の草を求めて一ぴきずつ山を目指す。けれども、その途中、岩場にいるトロルが行く手をふさぐ。三びきのやぎたちは山の草場までどうやってたどりつくのだろう。ドキドキするシーンが続く。

そして、クライマックスの場面。トロルが大きいやぎにやっつけられる。子どもたちは「すごい……」と思わず息をのむ。

絵本の中の、小さいやぎは中くらいのやぎに、中くらいのやぎは大きいやぎに守られている。行く手をふさぐものをやっつけて、目指す山の草場へ行くことができたのだ。

この絵本の素敵なところは、どんな困難も克服していく、そういう勇気を与えてくれるということなのだろうか。3歳の頃の俵万智さんはどんなことを感じていたのだろう。