「ねえ、おばあちゃん。おばあちゃんの腕ってどうしてそんなに血管が出ているの?」

「それはね、一生懸命ご飯を作ったり洗濯をしたり頑張ったからだよ。年を取るとね、いろんなところにガタが来ちゃってね」

「ガタ?」

「そう、おばあちゃんはもうおばあちゃんだからね。早く走ったり高くジャンプしたりは出来なくなってしまったの。杏南ちゃんはまだ元気に走ったりしながらお友達と遊べるでしょ。だけどおばあちゃんの体はもう年寄りだからガタが来ちゃって。

もうそういうのは無理だよ」

「ふーん」

「だけどおばあちゃんは、足も腰も腕も頭もまだまだ元気だから、大丈夫。腕の血管も浮き出ているけど、たくさん働いている働き者の証拠だね。杏南ちゃんをおんぶだって出来るよ。乗ってみるかい」

おばあちゃんは背中へ乗るように促した。しずかに両手を肩の上に乗せると、私は軽くひょいとおばあちゃんの背中に浮きあがる。

「手の血管浮き出ているところ、触ってもいい?」

「ああ、いいよ」

触れると私の腕とは違った。よぼよぼとしていて柔らかい。だけど暖かくて変な感触だった。

「わあ、すごいねおばあちゃん。痛くはないの?」

「痛くなんかないさ。おばあちゃんはずっとこの手だよ、おばあちゃんになってから」

「おばあちゃんになったのって、いつ?」

「康ちゃんと杏南ちゃんが生まれた時さ」おばあちゃんは笑顔で続けた。

「だけどおばあちゃんはまだまだ元気だよ。これからも杏南ちゃんが大きくなるまでずっとね」

「それがおばあちゃんの楽しみだから」

そして床に降りてからおばあちゃんの手を両手で握った。おばあちゃんもそのまましばらく握ってくれた。

「さあ、おやつ食べるかい?」

私は元気なおばあちゃんに運んできてもらった駄菓子を食べた。おばあちゃんはニコニコして私を見ていた。