そのうち、自由社、育鵬社、東書、教出の4社で、記紀神話における「高天原」の用語を見出すことができる。自由社以外はいずれも「たかまがはら」とルビがふられていた。

日本の歴史学の通説に従ったものであることは言うまでもない。自由社も旧版(平成23年)以前では、「たかまがはら」のルビであった。

ちなみに、高校の歴史教科書では、明成社の小コラム「日本の国生み神話」において「高天原」が登場するが、やはり「たかまがはら」のルビであった注2)

しかし、驚くべきことに、新版(平成27年)の自由社の歴史教科書では、計6か所に高天原の語句が登場し、うちルビがふられたすべて(3か所)で「たかあまはら」と明確に表記されているのである注3)

一つ目は、日本神話の概説において、である。しかも、他社のようにコラムではなく、「神話が語る国の始まり」で一単元をもうけ、本文中の「国生み神話」に「高天原」を登場させ、「たかあまはら」とルビが付されている。(写真1)

二つ目は、節末の見開きコラム「国譲り神話と古代人」のところで、

「今の皇室の祖先神とされるアマテラスオオミカミ(天照大神)は、高天原(たかあまはら)で神々と相談し、オオクニヌシに国土の統治権(とうちけん)を譲(ゆず)りわたすよう、使者を派遣(はけん)して…」

とあり、日本には古来、争いを避け合議(話し合い)によって解決しようとする伝統があることを分かり易く伝えている。

写真1  教科書中の高天原(たかあまはら)の表記 筆者撮影(掲載許諾済)

 


注1)『古事記の世界観 歴史文化セレクション』 神野志隆光 吉川弘文館 2008

注2)『最新日本史』 渡部昇一・中西輝政他 明成社 2012

注3)①中学社会『新しい歴史教科書』監修 井尻千男・田久保忠衛他2名 代表執筆 杉原誠四郎 執筆 松浦明博他12名 自由社(平成27年4月6日文部科学省検定済) ②中学社会『新しい歴史教科書』監修 海上知明・田久保忠衛他2名 代表執筆 藤岡信勝  執筆 松浦明博他10名 自由社(令和3年2月[7日文部科学省検定済)

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