エッセイ 小説 詩 せつなさ 恋 2024.05.26 初めて貴方を恋しいと思った。帰りたい、夢の中に。もう此処に貴方はいないから。 わたがしに触れたように 【第4回】 小林 世以子 切なくて苦しくて、それでも君に出会えてよかった この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 恋のよろこびと試練、日常のささやかな愛、等身大の自分……鮮やかでまっすぐな言葉がつめこまれた、100篇の詩を収録。※本記事は、小林世以子氏の書籍『わたがしに触れたように』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。 雨・涙 雨の日曜日 今朝 初めて 貴方を恋しいと思った。 夢の中ですら 笑顔を作るのが難しかった。 貴方が微笑み返してくれた時 本当に嬉しかった。 帰りたい 夢の中に。 だってもう 此処に貴方はいないから。
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『海渡るフォルトゥーナ』 【第16回】 鷹嶋 ちた 焼物は、日本に戻ったら殆ど捨てられていた。―宗易(千利休)を乗せた船は対馬へ、朝鮮国と貿易をする博多商人とともに… 対馬は古代から続く、日本の玄関である。南北二島に見える八二キロメートルの細長い島である。九州本土よりは百三〇キロ離れているが、朝鮮半島からは五〇キロ足らずである。鎌倉時代からは、阿比留氏に代わり宗氏がこの島を治めている。与良に国府が置かれ、府中と称している。「朝鮮国が、都の幕府に発行した『牙符』という物がございます。日本国の王使の印なのですが、幕府は大内様と大友様にそれをお与えになりました。大内…