鮭がたくさん釣れた時には自家製瓶詰も作っていた。紗季も一度習って作ってみたが、これは大変な作業であった。鮭を二枚に下ろし瓶に入る大きさに骨ごと冊に切って入れる。瓶は直径八センチで高さが一二センチと六センチの二種類あるので、大きい方には小さじ一杯の塩、小さい方には小さじ半分の塩を入れてシールする。
これを缶詰専用の大きな圧力鍋に水を五センチほど入れて、瓶を八個ずつ二段に並べて入れて蓋をして火にかける。中の湯気を完全に出した後に蓋をして密封し、圧力が一〇ポンドになったら小さい方のストーブに移して、弱火で一〇ポンドを常に保ちながら一時間半炊く。火から下ろし、完全に圧力がゼロになるまでそのまま置いておく。
この時によく注意しないと圧力がかかりすぎて鍋が爆発するので危ない。冷めてから蓋を開けて瓶を取りだす。骨も柔らかくなっているので、そのまま食べても美味しいし、石狩鍋のようにしてもいい。
赤黒い筋子はたっぷりの塩をまぶして、しばらく置く。それに熱湯をかけると皮がむけて中から綺麗なオレンジの卵がパラパラ飛び出してくる。ザルに上げて筋や皮を丁寧に取り除き水気を切って、熱湯消毒して乾燥させた瓶に入れる。
だし汁・醤油・酒を一対一対一の割合で漬けこむと、寿司屋のイクラの味になる。好みで醤油を味噌に変えたり、ショウガを刻んで加えたりと、味に変化を付けてもいい。熱々の炊き立てご飯にのせるとイクラ丼の出来上がりだ。カナダで卵かけご飯と言ったらイクラ丼のことなのだ。
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