晃司の支店があるモンクトンストリートを歩いていると、よく日系カナダ人に出会った。近くのカフェで朝一杯のコーヒーを飲みながら、今日は何をしようかと話すのが彼らの一日の始まりだった。日系一世や二世の彼らにとって、若いのに流暢な日本語を話す紗季たちはすぐに目につくらしい。

「どこから来たの?」「何をしているの?」

と声を掛けられ、鹿児島県出身とわかると、鹿児島にルーツがある人たちは、

「うちに遊びに来なさい」と、気軽に誘ってくれた。

その一人が兄と慕うようになる漁師のシュガーだった。シュガーの日本語名は「智(さとし)」なので、皆シュガーと呼ぶようになった。

ルーツは愛媛県で、カナダで生まれて育った。奥さんの純子は鹿児島生まれで小学校卒業まで鹿児島で育ったので、英語も日本語も堪能だった。近くのゴルフ場で会員の世話をする仕事をしていた。すぐに親しくなり、よく行き来するようになった。

シュガーはとても働き者で、冬皆が休んでいる時でも北の漁場でエビ漁に励んでいた。クリスマスやお正月シーズンには欠かせない甘エビだ。バンクーバーの日本レストランへも卸していた。

この甘エビをたっぷりのお湯で湯がき、冷たく濃い塩水に漬けると、真っ赤になった。長いひげが中心になるようにエビを円く並べて食卓に出すと、テーブルがいっぺんに華やかになる。

「サーモンのタレ」の作り方も教わった。三枚に下ろした鮭を縦に三センチ幅ほどの冊に切って、一〇%ほどの濃い塩水に三〇分漬けて水気を切って、それを一夜干しにするのだ。

冷凍保存して一年中食べられる。六センチほどの長さに切って、バーベキューで焼くかフライパンで焼いて食べる。程よい塩加減で絶品である。

鮭の砂糖漬けも美味しい。切り身をたっぷりの砂糖で漬けこんで飴色になったものを冷凍保存する。食べる時は水に戻して砂糖を落としてオーブンで焼いて食べる。