10. MONDO カイユの夢
カイユはドキッとして直ぐに手を引っ込めると、男は顔を隠したまま話し始めた。
「俺の名前はムスク。エガミから来た」
男がそうボソッと言った。カイユはそれを聞いた自分が驚いていなく、不思議に感じた。そしてムスクは呟くように続けた。
「今は、雲海のエガミの小説を書いた作者の家に向かっている」
カイユは、色々聞きたくて頭の中が混乱した。
「あなたがムスク。じゃーあの時、本を盗んだ猫? 教会にも現れた?」
ムスクはコックリと頷くと、なぜ自分がモンド(この世界)に来たのかを説明し始める。
「色々聞きたい事はあるとは思う。あの少女が鏡に入って分かったと思うが、エガミは実在している。俺は、エガミの太陽の国で零族だったが、猫と人間の両方に姿を変える事が出来る能力を買われ、本をモンドから盗って来るように命じられたんだ。本を持って帰れば解放するってな……」
カイユはムスクが人になっても顔は猫のままだったので、なぜ選ばれたのか疑問に思ったがそれは言わなかった。そしてムスクに聞いた。
「エガミに入ったベルサは、どうなるの? 大丈夫なの?」
「あの少女か? 俺にはどうなるかは分からない。ただエガミの様子は小説で描かれいる。だからそれを知る小説家に会いに行くのさ」
カイユは自分のせいでエガミに入ってしまったベルサを心配し、罪悪感を感じた。
「モンドから来たモンド人はそうは居ない。貴重な情報源なはずだ。女帝ミスラも今のモンドの様子を知りたいはずだ。だから酷い扱いは受けないだろう。心配はいらない」