カイユはそれを聞き少し安心した。電車の窓から見えた街の灯りは徐々に少なくなり、人里から離れているようだった。
「エガミ」を知る
電車は山道を通っているのか、窓の外の灯りはとうとう見えなくなり、闇だけが広がっていた。カイユはずっと黙って考えていたが、あれから一言も喋らないムスクに聞いてみた。
「ねぇ、エガミってどんな所なの?」
「エガミか? そうだな……、広大な雲海の海に、大小様々な島々が浮いていてな、その中でも大きな島を大陸島と呼び、地の国、水の国、太陽の国と言う王国がそれぞれ統治していたんだが、その三国は絶えず争っていたんだ。
だがある日、太陽の国の女帝ミスラが二国を制圧し、一旦は戦争に終止符が打たれたんだ。だがな、どうやら水面下では、地の国と水の国は手を結び、太陽の国への侵略を企んでいると言う噂だ。
昔はカーと言う獣もいなく、零族などと言う者達もいなく、平和な世界だったんだ。俺を導いてくれたゼノから聞いた話では元々はミスラが太陽の国の王座に就いてから、全ての歯車が狂いだしたらしい……」
カイユは小説では知りえなかったエガミの全容が分かった。なので小説と自分の夢に出て来るラムカについてムスクに聞いてみたが、その名の少女は知らないようだった。
ムスクは難しい顔をしながら続けて言った。