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初めて掛橋くんとベッドを共にした時、彼なら大丈夫と思ったから肌を晒した―はずだ。自身最大のコンプレックスを誠実に受け止めてくれたところははっきりと覚えているのに、前後の記憶が曖昧なのはなんだかんだ緊張していたってことかもしれない。

「その傷痕は後生大事に取っておいたんだ」全てを見透かした声が冷たく響く。

「……え?」

「僕が売り込んだ小説に、それに関する描写はなかっただろう?」

掛橋くんを帰してから少々ボーッとしていたらしい。ベッドに座り込んだ私の隣に悪魔が並ぶ。

「知ってたの?」

「僕を何だと思ってるの?」

悪魔だと、そろそろ正式に認めるべきだろうか。

彼の指先が左の肩口をなぞっていく。服の上からでもゾクリと身震いするような手つきだった。

「まあ、知ってるのは君が必死に隠してるってことだけだけどね。悪魔は人間の事情には踏み込まないから」

ならば洞察力が鋭いだけかもしれない。と、なかなか決定打を与えてくれない。

私は彼に背を向け、思い切ってシャツのボタンを外した。袖を通したままオフショルダーのように肩から背中を晒して、大きな火傷の痕を露わにする。

「どう?」

「……どうって?」

傷痕にも服を脱いだことにも動揺しない悪魔は、やはり人間らしい感情が欠如しているようだ。

「えっと、まだ残ってる? 自分からは見えにくい位置だからさ」

「ああ、あるね」

淡々と答える彼の反応は、同情や軽蔑がないという点で心地よかった。

「もう二十年以上前になるかな」

同じ話を掛橋くんの前でした時も、私はベッドに座り込んでいた。