美代子には同年配の女性として、裸の体型にも覗き見的な興味があり、ミストサウナなら室内が靄がかかっているので、悪趣味だと思いながらも、それとなく観察するのに好都合だと一人合点していた。

サウナ室にはすでに五人の先客がいた。奥まった場所の椅子に篠田さんのシルエットを見つけたが、美代子は入り口近くの椅子に腰かけて、十分位汗が流れ出すまで我慢していた。その時、篠田さんが立ち上がり、出口に向かいながら美代子に気が付き、軽く会釈して出て行った。

美代子は篠田さんが「独り身」と言っていた理由が納得出来たような気がしていた。なぜならウエストがくびれており、全身に張りのある体型を維持されているから、多分出産の経験はないと踏んでいた。

そう思いながら自身の腹部周りをそっと撫ぜて、もっと頑張らなくちゃ、と独り言を言いながらつばを飲み込んだ。

サウナ室に後続の人たちが入ってきて、出入りが頻繁になるに従い室内の温度が下がってきた。手慣れた人が蒸気が出るように、コーナーの火窯に水をかけた。しばらくすると蒸気が立ち上り室内の温度が急に上昇した。美代子はタイミングを見計らって出た。

ほてった体のまま、浴槽に肩まで浸かり、ジェット水流が出ているところに背を向けてしばらく腰のあたりに、気持ち良さそうに水流を当てていた。

美代子はこれまで大衆浴場には行ったことはなく、五年ほど前に箱根の温泉に家族で行って以来、大浴場は久しぶりだった。また意識して他人の裸を見た記憶もなく、今日、篠田さんの誘いを受けて、改めて観察したのだった。

服装を整えて、フロントに行くと篠田さんがソファーに座って雑誌を読んでいたところだった。

美代子は「ごめんなさい。待ちました? 気持ち良かったから湯船でジェット水流に長く当たっていました」

篠田さんも「気持ちいいよね」と同調して言った。

「駅までぶらぶら歩きましょうか?」

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