2人がその場から舞い立った直後、食い破るように地面が裂ける。

 

ドスッ

地面から飛び出した「なにか」は、踏み潰すように着地すると、自身の大きな瞳をギラつかせた。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

2人は酷く冷静に、視界に入ったものを分析する。

「四足歩行の生きた恐竜の化石」

そんな表現の似合う姿形をしており、曇った黄金の色を光らせていた。

シュバッ

不意を突くが如く、常人には決して捉えられない速度にまで瞬時に加速し、「なにか」は槍のような爪を、標的目掛け突き刺した。

「・・・・くっ!?」

 

えげつない突進力。

胸を貫かれる寸前、シンは「なにか」の爪を鷲掴み、致命傷を回避することに成功した。

 

「シン!」

攻撃は防いでも、勢いまでは防ぐことができず、なされるがまま、シンは後方まで押されていく。

「こ、コイツ・・・・。」

 

苦痛に表情が歪む。

全身の筋肉が悲鳴を上げて、今すぐに逃げろと直感が囁く。

 

「・・・・・・・・・はは。」

 

生きるか死ぬかの瀬戸際。

あろうことかこの状況で、シンの鼓動は・・・・・これまでにないほど高鳴っていた。

 

ドクン

 

久しぶりに自分と渡り合える強敵との出会いによって、眠っていた感覚が引きずり出される。

 

ドクン

 

命をかけた戦いの緊張感。

勝てるか、勝てないか、危機に追い込まれた者が選ばされる二者択一。

本気で戦えることの・・・・・・・嬉しさ。

 

ドクン

 

「本能」が叫ぶ、楽しめと。

「本能」が叫ぶ、自由になれと。

「本能」が叫ぶ、殻を破れと。

「本能」が叫ぶ、倒せと。

 

ドクン

 

自分自身の欲望を悟ったその時・・・・・・・・。

 

 

カチッ

 

シンの奥底で、なにかが鳴った。

 

【前回の記事を読む】自分達は簡単に死んではいけない存在…母のような院長の言葉に「!!」

 

【イチオシ連載】【絵本】生まれたばかりの子犬に向けられた言葉「2匹か、少ないな」

【注目記事】妊娠を報告した後、逃げるように家を出てしまった彼。意を決して連絡してみると…