四章 終の住処

こんなにおいしい肉を食べながら楽しむのは何年振りだろうか。赤ワインを口に転がしながら子供気分に帰るのも悪くはない。

トラヴィス、マリッサ、ライトは理想のパートナーがいないだの、ハートを射止めてくれるキューピットが現れないなどの結婚の話題で盛り上がっている。それぞれ理想のタイプは違うも、空想のキャラクターでしかいなそうなハイスペックな相手を求めていることは一致していた。

一方、リリーは白い歯を見せて笑っていた。話相手はドランだ。わずかに聞こえてきた単語から、ドランの職業について語っていると考えた。

そして料理をしたエマ、ステファニーとヘラは、出来上がった料理を味見して、点数をつけていた。エマは「レーズンパンはいまいちね」あまり良い評価ではなさそうだった。エマがステファニーに辛口のコメントをしていたのはちょっぴり意外に思えた。

俺が話に割り込んで指摘するのは雰囲気を台無しにする。主婦と料理人が御馳走の話をしているところにも入れない。そしてドランとリリーは二人で盛り上がっちゃっているため話に参加できない。結果、どこにも参加ができそうな会話がなかった。

仕方がないので、エマが低評価したステファニーのレーズンパンを大きなバケットからお皿に三つ盛りつけてガーデンに出ることにした。

ガーデンに通じるガラス張りの扉から隙間風が入って来ていることが分かった。トラヴィスとドランのどちらかがガサツな性格ということがわかる。その可能性は五割ずつのはずだが、俺はトラヴィスこそがガサツな性格だと思い込んでいる。

 

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