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これまでイチローは、日本のみならずメジャーリーグに於いても数多くの記録を打ち樹ててきたが、前述の森本トレーナーの言によれば、あと十年間は大丈夫と言う。今後も怪我なく体調に十分気をつけていけば、更なる飛躍が期待できる。

外野席から気ままに言わせて貰えば、次なる記録は、今年、二〇〇四年に達成した年間安打262本を近い将来凌駕すること。

年間200本安打以上の継続(イチロー自身が目標としている年間200本安打は、デビュー以来4年連続達成で、大リーグ記録)。

月間50本安打の回数増加等々。いくつもの開かれるべき門が遠くにあるいは近くに見えている。宣之氏の言葉を借りれば「毎日努力さえ怠らなければ、遥かかなたの一本のローソクの明かりにたどりつくことができる」とアドバイスしてきているそうである。一人のファンが勝手に解釈すれば、その一本のローソクの明かりとは、年間打率4割ということになる。 

長い歴史と伝統のあるアメリカ大リーグ史上に於いても、4割打者は過去八人(重複者は除く)しか出ていない。

それも一九四一年(昭和十六年)当時レッドソックス(今季ヤンキースとカージナルスを破り、八十六年振りにバンビーノ〈ベーブ・ルースの愛称〉の呪いを解いてワールドシリーズに優勝した)にいたテッド・ウイリアムスが4割6厘を打ったのを最後に、以来六十三年間一人も4割打者は現われていない。

然もT・ウイリアムスを除くその他の人達は、殆んど一九〇〇年代初期の達成者である。ご存知の通り、日本のプロ野球界では前述のR・バースが、昭和六十一年に作った3割8分9厘が最高で、いまだに4割打者は、七〇年の日本プロ野球史上、一人も出ていないのである。

日本もアメリカも他国に比べ野球の歴史は古い。その中で今最も注目されているのがこの4割打者の出現である。

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