ケンさんと出会った頃に映画『火垂るの墓』(原作:野坂昭如 脚本・監督:高畑勲 1988年)が初めてTV放送された。「普段は泣かないけど、あれは涙が出た」と話していたが、私は号泣だった。
年長クラス担当の時には8月になると『かわいそうなぞう』(作:土家由岐雄 金の星社 1970年)の絵本を読み聞かせする。子どもたちは静かに聞いている。読み聞かせをしたあとで「8月15日は何の日かおうちの人に聞いてね」と伝える。
子どもが家で聞いた答えは20名以上いるクラスの中で1名の男の子が「お母さんが『戦争が終わった日』と教えてくれた」と答えた。もう1名の男の子は「聞いたけどお母さん、『分かんなーい』って言ってた」と答えた。
我が子には、機会があれば自分の親(子どもにとって祖父母)の戦争体験を繰り返し伝えている。東京大空襲の中を逃げた話や出雲の父が川遊びをしていたら機銃掃射で狙われたという話は、どちらもリアルな実体験である。お二人ともよくぞご無事で生き延びてくれました。
涙もろい話から戦争の話となってしまったが誰しも人それぞれに違った経験をしている。口には出さないが生きるか死ぬかのような大変な思いをしている人はたくさんいる。その経験を人に思い出として話せるようになると、辛いことでも乗り越えられたと思える。
泣いたり笑ったり、どちらにしても人前で涙が出てしまうことを恥ずかしいと思っていた時期もあったが、気づくと「涙が出るのは趣味だから気にしないで」とさらりと言い訳をしている。
涙を流すことは悪いことではないし、逆に感情を出してスッキリする。オリンピック、パラリンピック、甲子園の中継では負けた時の悔し涙や勝った時の嬉し涙を見るが、抑えきれず込み上げてくる涙は本物。