⑨EGAMI イムフラ

地の国

イムフラは陸ガメの甲羅の上に立ちワニが倒れている姿を呆然と眺めていると、エメラルド色のカナブンが彼の肩に停まった。それは『虫の知らせ』と呼ばれるこの世界の伝言や、画像記憶を伝える情報伝達システムで、太陽の国に潜入しているイムフラの部下からのものだった。カナブンのお尻部分を耳に当てると羽音が音声になり聞こえた。

『鏡から送った植物獣はモンドから戻らず、本を奪う事は出来ず失敗に終わりました』

イムフラはそこまで聞き一人呟く。

「あのタイプの獣も、プラーナが持たず溶けたか……」

水の国のプラーナがなければ、植物獣達の体は体形を保つ事が出来ないようだった。(やはり、水の国と協力するしか道はないか……。大幻透視師を失った今、残りの残党が騒ぎ出すのも時間の問題……)と心の中で呟くとイムフラの決意は固まり、掌に乗せたカナブンに話しかける。

『未だ本はモンドにあり、太陽の国は本を手にしていない。なので記憶の記憶を持つ少女を手に入れれば太陽の国は落とせる。それには水の国の協力が不可欠、約束通り、進撃を開始する』

カナブンは話を聞き終えると、羽を羽ばたかせイムフラの言った事をオウム返しのように繰り返した。イムフラは音声を確認すると、カナブンに水の国の参謀エンキが持つカナブンの匂いが入ったガラスの小瓶を開き嗅がせ水の国へ放った。

次にイムフラは進撃の用意をするように部下に指示を出し、更にラムカを追うよう虫の飛行隊、トンボ部隊を出撃させた。

そこへ地の国の王グラドが王専用のセミ飛行機に乗って現れ、近衛兵数人と飛行機を降りるや否や、イムフラに激怒し向かって行く。

「イムフラ! ワ二を一匹駄目にしたらしいな! 何を勝手にしている! 裏でこそこそと水の国と太陽の国へ進撃を進め、そんな事をしたら、全部のワニが全滅する! いや、国民が全滅し国が滅ぶぞ!」

イムフラはグラドの言った事には反論せず静かに言った。

「もう貴方は、必要ない用済みです」