ついに晴れ男もここまでか、と覚悟したらすぐに日差しが出てきたぞ? これまでの自転車人生で度々雨に祟られてきた身としては、何だか不思議な心持のまま熊野街道のピークを越えると、ここから下り区間となり、やがて眼前に海が見えてきて、下った先が紀伊長島であった。
この辺りにはいわゆるビジネスホテルというものがなく、今日の宿泊先は民宿であったが、洗濯機もあって洗濯は出来るし、温泉ではないが大浴場もあって、おまけに食事がとても美味しいとくれば、この先の宿泊計画にこの様な民宿を加えるのもありだと思った。
またおかみさんとの話の中で、過去に野宿縛りで日本一周を自転車でしている女性や、リヤカーを引きながら徒歩で日本一周をしている爺さんの話も聞けて、やはり紀伊半島はいろいろな旅人が集まってくるところなのだと実感。
また、熊野古道へは丁度仕事をリタイアした位の初老の男達がよく訪れて、ここで人生のリセットを行っているという話も聞けて、正に自分も37年間勤めていた会社を退職して旅をしている訳であり、これまでを振り返る時間もなく走り続けてきた男達が束の間の休息を求める姿には、大いに共感する事が出来た。
紀伊半島とはきっと再出発の地であるのだろうと、久々に畳の上の布団でまどろみながら、いつの間にか眠りに落ちていた。
3月7日(月)10日目 紀伊長島 熊野 新宮 串本
走行距離 123.6km/STAGE 累計距離 1044.4km/総累計距離(10日目) 1044.4km
伊勢以降のルートについては全く走行経験がないため、ようやく旅をしているという実感を伴いながら、この先はどうなっているのだろうか?という、ドキドキ感を得ながらスタートする。昨日宿泊した宿のおかみさんが言った通り、熊野まで約50kmは山岳区間であり、最高400mを超える峠を息も絶え絶え何とかやり過ごして海岸線へ出ると、基本平坦ルートに安堵する。
昨日は昼食場所がなかなか見つからずにコンビニで済ませたため、今日は目に入ったところに入ろうと辺りをキョロキョロしていて見つけたのが、全国チェーンのハンバーガー店!? ここまで来てそれはないだろうと思ったが、この先何かある保証もなく、またファストフード店は実際自転車に乗っている時には度々利用している馴染みがあり、選択として実は悪くないので即入店する。
今日の目的地である串本まではこのR42を辿る一本道のため、ミスコースする心配はなく気持ち的には楽なのだが、海岸線特有のトンネル達が手ぐすね引いて待っている様なロケーションであり、最大2km含めこの区間で計約7kmもトンネル内を走行する羽目となる……。
【前回の記事を読む】自転車旅の醍醐味、温泉、美食、そして懐かしの友との再会
次回更新は3月31日(日)、8時の予定です。