「動物はしゃべれない。どこが痛いのかも言えない。それを助けるために俺たち獣医はいるんだ。それに一番は動物が好きなんだ」って。

学校が休みで知らなかったけど、ドッグランで月一回、日曜日に、譲渡会を開いていた。行ってみたら、先生もちょくちょく顔を出してた」。

カナは、知りたがり屋。ネタは尽きることがない。数日後、毛がぼさぼさになった自宅のシュナイザーの愛犬ハナを連れて診察に行った。

「ドッグランは広いし、とにかく、開放的なの。受付の彩さんが、『診察予約の時間までかなりあるわね。ドッグランで遊んできてもいいのよ』って言うの。『それとも、保護した子たちを見ますか?ドッグランの鉄棒にリード繋げるようになっているから、そこにハル君繋いで、奥のシェルターに行ってみて。 

犬とか猫、欲しいって言う人に、スマホで情報拡散して欲しいの。詳しいことはホームぺージに載せていますからって添えてくれたら嬉しいの。それじゃあ、順番来たら放送でお呼びしますね』って、放送?って驚いたけど、本当に感じいい人なの」

って彩さんと言う人の口真似までして。

「ハル繋ごうと思って、ドッグラン行ったら、トレーニング教室が開かれていた。飼い主さんと犬がずらーッと並んでるの。ちょっと壮観。

シェルターに行ったら、それが広いの。聞いたら、七〇平米、マンション一戸と同じ広さなんだって。うちのマンションより一部屋分少ないだけ。フローリング敷きで、まるでペットカフェ。犬一〇匹まで、猫一〇匹までを保護して、譲渡会に出すんだって。

来たばかりの子とか、怖がる子はゲージに入れられるんだけど、私が行った時は空っぽ。犬も猫もシェルターの中で放し飼い、みんな仲良くしてる。キャットウォークも天井まであって、みんなじゃれあったり、いつまでも見ていられる。

それに、保護された子とは思えないほど、みんな綺麗なの。ゲージの中も汚れていない。だいたいシェルター自体がなんかいい匂いがするの。一人がモップで床拭いたり、一人が犬猫の体拭いてた。

犬も猫も首に色違いのリボンが巻かれていて、半分くらい子たちにカードがブラ下がっている。聞いたら、バイトのF大の同い年の子が、『カードがついてる子たちは、譲渡先が決まった子たちで、トレーナーさんやメグ先生もトレーニングして、最低限の躾もしてる』んだって。だから、『ここのシェルターの子たちは売れ行きがいいの。歳を取った子も売れ残ったことないの』って言うの。

おカネ、もらうんですか? って聞いたら、『それまでのワクチン代とか去勢・避妊手術代、躾代、マイクロチップを入れたり、どの医院でもいいから定期健診に行ってもらうことも約束してもらって、犬も、猫も一匹五万円もらうの。せめて、そのくらいの覚悟がなければ、渡せないってメグ先生が』。

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