ずっと我慢していたから、止まらなくなった。しばらく気の済むまで泣いたら、不思議とすっきりした気分になって、それからさっき書いた手紙をノートから切り離して僕はびりびりとやぶり捨てた。これは、弱虫の手紙だからだ。やっぱり、学校の中での自分の弱くて格好悪いところなんて、お父さんにだって見せたくはなかった。

新しいページを開き、僕はお父さんへの手紙を書き直した。

 

お父さんへ

お父さん、お元気ですか。ぼくは元気です。

ぼくは今、学校で、リコーダーのれん習をいっしょうけんめいしています。はんで力を合わせて、アンサンブルのれん習をしています。アンサンブルというのは、上のパートと下のパートに分かれて合そうすることです。

このアンサンブルで、はんのぜんいんが一曲一回もまちがえずに合そうができたら、みはる先生が、がんばりカードに合かくのしるしのシールをはってくれます。いろんなどうぶつのシールで、つぎはどんなシールなんだろう、とそうぞうするのがたのしみでいます。

ぼくは8はんで、8はんには、田村じゅんくんと、ふえのリーダーのみうらさんと、山田さんがいます。8はんはいちばんに「かっこう」の合かくをもらいました。そのあとのかだいの「カノン」も、すぐに合かくしました。「ぶんぶんぶん」は何回かまちがえてしまいましたが、この前やっと合かくしました。すごいでしょう。

今8はんで、「ウィーンのおどり」をれん習していますが、とてもむずかしくて、ぼくはすぐ、まちがえてしまいます。

ぼくのクラスには、だいちゃんという体の大きな男の子がいます。だいちゃんは、ぼくがリコーダーでまちがえたりすると、わざとわらいます。ほかの子もそのまねをするので、ぼくはすごく、いやな気もちになります。どうしたら、やめてもらえるでしょう。

それから、みんなの前に出ると、すごくきんちょうします。きんちょうしない方ほうがあったら、おしえてください。

十月十三日       結城まこと

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