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 深海の岩

ただ、それが対人間の場合は、相手があることだから、多分いつも自分の思い通りにいくことばっかりじゃない。いなくなってしまったり、自分が思っていたのと違ったりした時の反動が、僕は怖かった。

僕らが小学六年生の時、だいちゃんのお母さんは、よその家のお父さんと再婚をした。その時にひどく荒れただいちゃんの姿を、僕はよく覚えていたから。

「だいちゃん、だいちゃん、だめだって!」

あの頃、僕は何度そう叫んで暴れるだいちゃんの止めに入っただろう。小学校時代のだいちゃんは、良くなったり、悪くなったり、ひどく情緒の不安定な中にいた。それがようやく落ち着いたのは、平良先生と出会ってからだ。

平良先生について野球に打ち込むことで、だいちゃんはすごく成長した。そして、他にも慕う人間が出来たことはとても喜ばしいことなのに、なぜか僕は、じわっと込み上げてくる不安な思いを拭えずにいた。それはきっと、だいちゃんの生い立ちや、ひとり味わってきた孤独を僕が一番知っているからなんだろう。

お父さんの手紙

だいちゃんと僕が同じクラスになったのは、小学校三年生の時だった。その頃のだいちゃんは、始終落ち着きがなくて、先生の言うことなんてまるで聞かない、周囲を困らせてばかりのいわゆる問題児だった。

皆で遊んでいてもすぐにルールを破ってぶち壊すから、遊びそのものが成立しなかった。それでも誰もだいちゃんに文句が言えなかったのは、だいちゃんが学年で一番体の大きな子だったからだ。桁違いに体格の違う子が近くにいるというのは、子供たちにとっては、圧力そのものだった。

僕らのいた三年三組の間では、いっ時、休み時間に皆でドッジボールをするのが流行った。当時から体の小さかった僕はちょこまかと早く動くことは得意で、明るく活発だったからクラスでも目立っていた方だった。

そこに目をつけたのか、やがてだいちゃんは、このドッジボールで僕だけを集中的に狙うようになっていった。びゅんびゅん僕の方に飛んでくるボールをたくみによけながらボールの行き先を目で追うと、外野にいるだいちゃんの手にまたボールが回される。味方が取ったボールはみんなだいちゃんが自分によこせと合図を出すからだ。