私は、翌月の三月から絵画教室の生徒として絵を描く準備をしたのであった。

私は家に戻ると手を洗い、コーヒーをドリップし始めた。そして冷蔵庫から、朝、用意してしまっておいたサンドイッチを取り出して、テーブルの上に置いた。コーヒーがドリップし終わると、それをマグカップに注いで、サンドイッチと一緒に食事し始めた。

食事が終わると、食器を流しで洗って、拭いて、食器棚にしまった。それから寝室へ行ってベッドの上に横になって、今後の時間の過ごし方について考え始めた。

月に2回、絵画教室に行って時間を過ごす以外は、これといって、特別するようなことは何もない。私の友人は皆結婚をしていて家族がいる。皆、それぞれ家庭のことで忙しいはずだから、私と時間を過ごすような人は、ほとんどいないはずだ。私には、妹が一人いて、夫と共に横浜に住んでいる。

妹は、今、六十三歳で、妹の夫も妹と同じ歳だ。二人は高校の同級生で、その時代から、ずっと二人で付き合っていて、今に至るまで、二人一緒にいる。妹夫婦には、二人息子がいるが、二人とも独立して、実家を出ている。妹の夫は、大手食品会社でサラリーマンとして働いていて、定年退職するまで、あと二年ある。

月曜日になって、私は妹にオンラインで電話した。絵画教室に通うことになった報告をするための電話だ。週末は、妹の夫が休みで家にいるので、いつも電話するのは遠慮している。

「幸子ちゃん、私よ」

「ああ、お姉ちゃん」

「先週土曜日に、絵画教室に体験入学してきた」

「どうだった?」

「うん。とても良い雰囲気で、私、入会することに決めた」

「良かったね」

「ええ。また青春時代に戻った気分よ」

「お姉ちゃん、子どもの時から、絵を描くのが好きだったよね」

「ええ。絵を描いているとリラックスして、とても楽しい。ところで今日は太郎さんは仕事でしょ?」

「ええそうよ。太郎さんも、あと二年で定年退職でしょ。だから、やり残しのないように一生懸命仕事しているみたいよ」

「私は先月定年退職したじゃない。忙しい毎日から急に暇になって、時間を持て余しているわ」

「本を読んだり、音楽を聞いたり、料理したり。あまり予定は立てずに、気の向くままに楽しく毎日を過ごせばいいんじゃない?」

「そうよね。今まで忙しくしてきたから、ゆっくりすればいいのよね」

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