絵画教室

私はアトリエの中へと入ってゆき、たくさん置かれている椅子の一つに腰かけた。十分ほどして、人々がアトリエの中に入ってきた。人々は、イーゼルの上に、カンバスやスケッチブックを置いたり、イーゼルの横にあるテーブルの上に画材を広げ始めたりした。

そして先生もアトリエの中へ入ってきて、私に挨拶をした。

「改めまして。私がこのアトリエを主催している中島です」

「こんにちは。はじめまして。私が体験入学をさせていただく坂元ゆきです」

「ようこそいらして下さいました。お電話では、学校の部活で美術部に所属していらしたということで」

「ええ。中学・高校時代、美術部で、主にデッサン画を描いていました」

「それでは、絵を描くことには、慣れていらっしゃいますね」

「ええ。絵を描くことは、子どもの時から好きで、よくイラストのようなものも描いていました」

「今日は、僕の方で、鉛筆と消しゴムと画用紙とりんごを一個用意したので、まずはこのりんごのデッサンをして下さい。その前に、クラスの皆に、坂元さんを紹介しますよ」

先生は、そうおっしゃると、十台あるイーゼルの一つの前に私を立たせて、クラスの皆に向かって私を紹介し始めた。

「皆さん、おはようございます。今日は、体験入学でお一人、このクラスに参加される方がいます。坂元さんです」

「こんにちは。はじめまして。坂元です。今日は体験入学に参加させていただくことになりました。よろしくお願いします」

私はそう挨拶をすると、クラスの皆は、にこやかに会釈をした。

クラスは朝の十時に始まり、二時間、絵を描き、十二時からは、三十分間かけて先生が品評会をして下さる。品評会は、イーゼル十台を横一列に並べて、それぞれの作品に、先生がアドバイスをして下さるというものだ。

皆もぐるりとイーゼルを囲んで、先生のおっしゃるアドバイスに耳を傾ける。私が描いたりんごのデッサン画は、とても写実的で自然な感じがして、良いと思いますと、先生におっしゃっていただけた。

十二時半に品評会が終わると、皆はそれぞれ、カンバスやスケッチブック、画材などを、流しのところにある棚に収め始めた。そして、皆は各自、さようならの挨拶をすると、アトリエを出ていった。

私は、この絵画教室の雰囲気が、とても気に入って、その日のうちに入会を決めた。私のクラスは、毎月、第二と第四の土曜日の午前中に行われて、月謝は、月に七千円だとのこと。月謝は前月第四土曜日に納めて下さいと、先生がおっしゃった。

そして次回からは、スケッチブックと画材は、自分で用意して持ってきて下さいねと言われた。それで私は、教室が終わったあと、帰り道に、神楽坂にある文具店に立ち寄り、スケッチブックと4Bと3Bの鉛筆と消しゴムを買った。