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ぼくの年末の仕事のローテーションは、午前中は宅配、午後は酒屋の本業、夕方からまた宅配となっている。昼間不在だった家や夜間指定の荷物を届けて回るために、配達は夜八時過ぎまで及ぶこともある。
午前中の配達で不在票を置いてくると、午後の本業の時間帯に、今帰ってきたから配達して欲しいなどという連絡が入ることがあり、その一個を配るために本業を中断しなければならなくなるという無駄が生ずる。
それで不在票は置いてこないのだ。夜また回ればいいということにして。夜になってもいなければ、さすがに不在票は置いてくることにしている。そして残った荷物は本業のドライバーに預け、彼らの業務は更に続いていく。
不在が多いとどうしてもイラつく。空振りの虚しさに加え、わずかな金を得るために、再び訪問しなくてはならないからだ。フラストレーションを抱えたぼくは、知らず知らずにオアシスを求めていた。
今日の配達ルートを辿ることで、次第に近付いてくるあのアパート、その二階にある大地瞳子のいるドアを。そこを開けて、ちょいと愉快な会話でもして、こんな憂さを晴らしてやりたい。
けれど彼女もまた不在の可能性もあるわけで、そうしたらどうしよう。よく考えれば、平日の昼間に在宅している方が珍しいのだ。昨日いたのはなぜだろう。仕事は何をしているのだろう。あるいはすでに結婚しているのかもしれない。主婦であれば、昼間に在宅していたって不思議ではない。
だから姓が『大地』から『轟』に変わっているのか、と納得し掛けたが、結婚では名前までは変わらないから、やはり腑に落ちない。第一彼女に結婚は不似合いという気もする。余計なお世話か。そんなことを考えていたら、メゾン灯に到着した。