図書室のお楽しみ
さて、この図書室では絵本を読むだけでなく、色々な楽しみがあった。
たとえば、マトリョーシカ人形が図書室にあった。中に人形が入っていることは知っているけれど、どんな風に入っているのか見たことがない。
園長先生に「開けてもいいですか?」と思い切って聞いてみた。すると「いいですよ」と言っていただいたので、子どもたちと一緒に中に入っている人形を次々と全部取り出して、並べてみたことがある。絵本を読むよりも、こちらの方が楽しくて、しばらくマトリョーシカ人形遊びが続いたことがある。
ある日、大人気のマトリョーシカ人形遊びはおはなし会の直前まで繰り広げられていて、机の上に全部出したままになっていたことがある。そのため、おはなし会では、まず、机の上にあるマトリョーシカ人形のことを紹介することになった。めったに見ることのできないのだもの。これはこれで良かったと思う。
片付けはめぐちゃんと約束をしていたのでそのことも告げておいた。すると、おはなし会が終わってから「ほら、めぐちゃんにやらせてあげなよ」と男の子が言ってくれる。そういう心が育っているのだと、子どものことばに感動した。
お帰りの準備には遅れてしまっためぐちゃんだけれど、担任の先生から「最後まで片付けることは大切なことです」と言ってもらえた。ほっとした。
それから、14ひきのシリーズ(注2)のジグソーパズルを旅先で見つけたので、みんなで遊ぼうと思って図書室に持っていったことがある。その時、毎日のように、色々な子が入れ替わり立ち代わり「パズルありますか?」と言って図書室にやってきていた。
数人で一生懸命やりはじめる。でも、お帰りの時間になると、ちゃんとパズルを片付けはじめる。逆に、どうしてもうまくパズルができなくって、お帰りの時間が迫ってきて「あと2分だけね」と告げて時間切れになることもあった。
マトリョーシカ人形もパズルも、みんな大好きで、しばらく色々なメンバーが図書室にやってきていた。
図書室にみんなが来てくれるのはうれしかった。でも、このまま絵本から離れて遊びの空間になってしまうのだろうか、と悩んだことがある。
(注1)はせみつこ(波瀬満子)国内外で長くことばに関わる活動を続けてきました。1993年~1999年にはNHK教育テレビの「あいうえお」にレギュラー出演。テレビ画面を通してことばとあそぶことの楽しさを多くの子どもたちに伝えました。現在、はせみつこさんの多くの業績は「ウリポ・はせ・カンパニー」(https://ulipo-hasse.com/)に引き継がれています。
(注2)いわむらかずおのシリーズ絵本。ねずみの大家族のおはなしで童心社から出版されています。
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