しかし干渉計を使って干渉縞のずれを測定しようとしたが、否定的な実験結果を得たことで、電磁波を伝える媒質の存在は否定された。この結果を今日では「光は真空中を伝播する」と言って済ましている。ちなみに、光とは電気と磁気が協力して、空間中を伝播する電磁波であるらしい。
素粒子とは力、エネルギーの塊であったわけだから、量子論的にはπ中間子や核子Nのそれぞれの質量を導き出したいが、導き出す手立てはない。
一方、「素粒子物理学における対称性の自発的破れ」を実現する模型では、πもNも真空からの量子論的ゆらぎ、励起として現れ、その質量は媒質的な真空での動きにくさ・慣性の大きさを表しているとみなされているそうだ。
最近の素粒子物理学の発展を促した考え方として、ボース粒子とフェルミ粒子の入れ替えを引き起こす超対称性が挙げられるのだという。
これは電磁気力、弱い力、強い力、重力の四つの相互作用を統一する超弦理論において矛盾ない理論の構成のために不可欠要素だとされる。
しかし、事実によって、物質として自然界に存在する電子等のフェルミ粒子と、力を媒介とする光子等のボース粒子とを取り換える対称性としては働き得ないことが証明されている。今の段階では、現存する素粒子たちの超対称パートナーは観測されていない。
ただ、宇宙にはダークエネルギーやダークマターと言われるものが何十パーセントという割合で存在するので、素粒子たちの超対称パートナーが発見され、超対称性の力学的自発的破れが観測される可能性は高く、実現すると考えられている。
対称性の自発的破れという言葉から、というより対称性という言葉から、複素数の極表示を思い出した。極表示にはiに対して、-iという虚数を使う利点があったが、あの座標のような対称性があるのだろうか。
素粒子とはそれ以上分割できない粒子だと初めに書いたが、それ以上分割できないものが粒子である必要はなく、エネルギーであったり、波動であったり、質量のないもののゆらぎであったり、何かと何かの接触で生まれるものであったり、燃えて残る灰のような化学変化であったり、とさまざまなことが考えられる。素粒子という名前も変わるかもしれない。
素粒子っていったい何だ。
参考文献
『宇宙と素粒子のなりたち』
糸山浩司、横山順一、川合光、南部陽一郎 著
京都大学学術出版会、2013年
※特に、第1章「対称性の自発的破れと素粒子物理」糸山浩司