「ヨーコ、そんなに躍起になることはないでしょ」
「だって、テク坊が……」
そこへすかさず、テク坊が口を挟みました。
「うちのおばあちゃんが、いつもお母さんに言ってるんだもん。大人になったらバカにならなきゃダメだよ~って」
テク坊は胸を張って大きな声で叫びました。
「だから、おねえさんもおばさんもバカなんだよ。うちのおばあちゃんは俺に嘘つかないからね! おねえさんだって、うちのおばあちゃんのこと知っているでしょ?」
(テク坊、わかってないなぁ)と私は心の中で必死に堪えておりましたが噴き出してしまいました。
「……なんで笑っているんだよ」と口を尖らせながら悪態をついていました。
「だって……おばあちゃんの言っているバカは、テク坊が思っているバカとは違うのよ~」
「何が違うんだよ!」
「おばあちゃんのバカは、お母さんに利口になりなさいっていう意味なのよ」
喧嘩腰のテク坊にそう言い返すと、テク坊は混乱して……、
「うっそだよ~……バカがなんで利口なんだよ」
とパニック状態になり、叫んでいました。
「さあね」と意地悪っぽく私が言うと、「教えろよー!」と地団太を踏むテク坊に、母が助け舟を出しました。