七 大人はみんなバカだから……
もみあげを鋭角に剃り整えたテクノカットが流行っていた頃、私が『テク坊』とニックネームをつけた男の子がいました。
この子は、私を見つけると必ず悪態ついたり、嫌がらせし放題の小学四年生―― 母曰くイタズラしたいお年頃だそうです。
ある日、私が一人で店番をしているとテク坊がやって来ました。
「あれ? おばさん、今日いないの?」
「おばさんはおトイレにいますよ」
そう言うと、テク坊は突然ゲラゲラ笑いながら、
「おばさんもクソするんだ! ワハハ! クソ、クソ、クソ、クソ、みかどのおばさん、クソくらえ!」
と大きな声でひどい鼻歌を歌い始めました。
「どうして、そんなこと言うの?」
私が呆れていると、「俺はバカだからね」と突然笑いながら自信ありげに言い放っていました。
「自分をバカって言ったら、テクがかわいそうじゃない」
私は穏やかに言ったつもりだけど、テク坊は生意気な口調で言い返してきました。
「俺だけじゃないよ、おねえさんもバカだし、みかどのおばさんもバカだよ。俺、ちゃんと知っているんだぜ」
私や母のことまで「バカ」呼ばわりされて、少し苛立ってきました。
「テク坊~! なんでそんなにバカバカって言うの? 人に向かって言う言葉じゃないでしょ!」
そのとき、母がトイレから出てきました。