『無知だった領域』

俺は混乱しつつも彼女の質問に答えるため、板書していた自分の国語のノートの右端に、彼女の質問に対する自身の疑問を出来るだけ落ち着いて書き込んだ。

『院さんって人からは、少し話を聞いたよ。でも何で日下部さんが知ってるの? 何か知ってるの?』

「(……この話を知ってるって事は、院さんと関わりがあるって事でまず間違いないよな。でも、何でよりにもよって日下部さんなんだ?)」

彼女はそれを確認すると、顔をしかめて俺のノートに顔を近づける。

「(俺の字が汚くて見にくかったのかな? 次から気を付けよう……)」

数秒後に彼女も、それを読み取り自分のノートに書き綴り『私も一応院さんのいるチームの一員みたいなものだから』という一言を返してきた。

 

その間も疑問と矛盾で頭の中がグルグルと回った。

そもそも日下部さんの言っている「院さん」は本当に俺の知っている院さんなのか?

……いや、「院さん」なんて呼び方はすごい珍しいから間違えようもないと思うけど。

 

それから互いにノートを寄せながら書き綴った。

……字の読みやすさも気を付けて。

  

『質問が多くて申し訳ないけど、チームって何の事? そもそも、院さんって、あの院さんの事だよね?』

『久禮総合経済大学一回生の院さんだよ?』

『合ってた、ごめん』

『メンバーの方は聞いてないの?』

『うん。院さんからはSPHに気を付けろって言われたくらいで、』

『そっか』

ここまでやり取りした後「(あ、でも、確か院さん「仲間」がどうのって言ってたような。)」と、彼の言動を思い出し、日下部さんと院さんとの関係を推測する。

  

これだけやりとりをしても、まだ察しがつかない俺は最後に内容の根本を聞くことにして、『何で日下部さんは、そのチームの一員になってるの? もっとそのことについて教えて欲しい』とノートに書き、彼女に寄せた。

 

それからさっきと同様に数分後、彼女からの返答の文章が書かれる。

今回は少し待ち時間が長かった。