とある雪原の森林

・・・・・・・・・・・・・・・・・・これが、彼の「運命」を決めてしまうとも知らずに。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

少女の前に立ったミウロスは、小さな虫を潰すかのような感覚で、風を超える速度の棍棒を振るった。今まで、数々の命を喰らってきた一撃である。こんな少女に避けられるはずがないと・・・・・・・・・彼は、たかをくくっていた。

次の瞬間。顎に感じたことのない強い衝撃が走り、彼はのけぞり、持っていた棍棒を落としてしまう。

「・・・・・ッ!?」

ミウロスは混乱した。いったいなにが起きた?・・・・・・殺したんじゃないのか?・・・・・・・避けた?・・・・・・・違う!・・・・・・絶対に違う!・・・・・・殺したはずだ!・・・・・・・避けられるわけがない!・・・・・・・・・。彼は、一瞬のうちにいくつもの思考をした。そして、最終的に辿りつく結論は・・・・・・・。

絶対に殺したはずだ!・・・・・・というものであった。しかし、その結論を否定するかのように、無慈悲な一撃はまだまだ続く。

『信じられない圧力で押し潰されて、片足がグシャリと歪んだ。』

「・・・・・・ッ!」

痛みで咆哮を上げようとするも、次の一撃がその暇すら与えない。

『弾けるように、視界の片方が欠けた。』

正確にいうなら、片方の目が潰されたのだ。彼は片足と片目を同時に失い、体勢を崩され、空を見上げるように倒れた。倒れたのとほぼ同じ瞬間に、残っていた手足が、一本残らずグシャリと歪んだ。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

ミウロスは、ここまで追いつめられてようやく理解した。自分が殺そうとしていたのは、「敵」だったのだと。決して手を出してはいけない、巨大な「敵」だったのだと。

命が尽きるその直前、彼が見たのは・・・・・・・・・。

怒りの形相で、自分を殴り続ける、悪魔のような少女だった。

王国(町の孤児院)

「・・・・・・・・・・・・・」

ベッドの上に横たわり、いまだに眠り続けている少女を、シンは見つめていた。

「気持ち良さそうに寝てるね。」

隣で一緒に見ていたユウが、安心したような声を出す。