「一時はどうなることかと思ったけど、歩き疲れただけみたいで良かったよ。」
「そうだな。」
ほっとしたのも束の間、すぐにまた、ユウの表情に陰りが出てくる。
「この娘がこんなひどい目に遭うのも・・・・・・・・・・全部、魔物のせいだよね。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「倒しても・・・・・倒しても・・・・・きりがない・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「どれだけ強くなっても・・・・・・・魔物は・・・・・・・あいつらは・・・・・・どんどん出てくるんだ・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「僕達ってさ・・・・・・ほんとうに・・・・・・・・報われる日が来るのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・」
コツン
ユウの頭を、シンは軽く小突いた。
「痛い!」
「なに弱気になってんだよ、らしくねぇぞ。」
「シ、シン。」
「もっと自分の行動とその結果に希望を持て。」
「!」
「お前の言葉だぞ。」
「・・・・・・・・・・・・・」
ポン・・・・・・・・・と、ユウの頭の上に手を置き、シンは言葉をかけ続ける。
「片方が挫けたら、もう片方が支える。」
「2人で1人の勇者、それが俺達だ。」
「大丈夫だ。」
「確実に。」
「一歩ずつ前には進んでる。」
日向のようなシンの言葉は、ユウの心にじんわりと、温かく響いた。
「ありがとう。シン。」
「おう。」
「また、勇気づけられちゃったな。」
「また?」
「ううん、なんでもない。」
「そうか。」
「ところでさ・・・・・・。」
「なんだ?」
「いつまで・・・・・・・・・・手、置いてるのかな?」
「あ、悪い。」
言われてシンは、パッと手を離した。
「あ・・・・・。」
ユウは、名残惜しそうな表情をする。
「シンってさ、いじわるだよね。」
「な、なにがだよ。」
他愛もない会話が続こうとしていた、その時のことであった。
(貴方達も面白そうね。)
身に覚えのない誰かの声が、2人の脳裏に突然響く。
「「!!」」
「シン。今、なにか言った?」
「いや、俺はなにも・・・・・・。」
「気のせいかな?」
謎の声に、2人が困惑していると・・・・・・・。
「んぅぅ・・・・。」
渦中にいる少女が目を覚まし、布団から体を起こそうとしていた。