奈良編

古き仏を訪ねて 2015年10月13日(火)~ 15日(木)

10月13日

名古屋駅から近鉄線を乗り継ぎ室生口大野駅へ向かう。降り立った室生口大野駅は無人駅だった。駅前は閑散としていて喫茶店の「おいしい珈琲」の幟のぼりが寂しく感じる。駅前で「室生寺」行きのバスを待つ。

 

室生寺(むろうじ)

室生寺は杉木立に包まれた山寺である。朱色の欄干の太鼓橋で室生川を渡って「女人高野室生寺」と刻まれた石柱が立つ山門に出る。室生寺は女人禁制の高野山に対して女性の参拝が認められ「女人高野 (にょにんこうや) 」と呼ばれていた。仁王門をくぐり、鎧坂を上れば弥勒堂、金堂(国宝)が建つ。石楠花の時季は終わり、紅葉にはまだ早い。

弥勒堂には釈迦如来(国宝)や弥勒菩薩が祀られている。金堂には釈迦如来(国宝)を中尊に薬師如来、地蔵菩薩、文殊菩薩、十一面観音菩薩(国宝)と平安時代の5体の仏像が安置され、その前に薬師如来の眷属・十二神将が並ぶ。十二神将は小さいが、5体とは対照的に躍動感に溢あふれ、その存在感は引けを取らない。

室生寺へ行くバスの中で、お遍路さんの格好をしたおばあちゃんが「また十二神将さんにお会いしに行くの」と私に言っていた。おばあちゃんはこれからお参りするのだろう。

石段を上って「灌頂堂(かんじょうどう)」(国宝)といわれる本堂に入って本尊如意輪観音菩薩(にょいりんかんのんぼさつ)を拝み、さらに石段を上って五重塔へ。

五重塔は平安時代初期の国宝で、高さは約16メートル。屋外に建つ五重塔では最小のものという。塔の相輪が珍しく、九輪の上には一般的な火焔型の水煙の代わりに宝瓶(ほうびょう)が掲げられている。室生寺は水の神と深い関わりがあるらしく、寺伝によればこの宝瓶に竜神が封じ込められているという。

奥の院へ向かう。杉木立の中、まだ石段が続く。五木寛之著『百寺巡礼 第一巻 奈良』(講談社文庫,2005年)によれば、室生寺の石段は仁王門から奥の院まで700段あるらしい。奥の院には舞台造りの位牌堂と御影堂(みえどう)が建つ。御影堂には非公開の弘法大師像が祀られている。

700段の石段を下って室生寺門前に戻り、「室生口大野駅」行きのバスを待つ。

バスを「大野寺」で下車し大野寺に立ち寄る。

 

大野寺(おおのじ)

大野寺は室生寺西の大門で、宇陀川を挟んだ対岸の岩壁に線刻された弥勒磨崖仏(みろくまがいぶつ)で知られる。この磨崖仏は高さ11.5メートルで鎌倉時代初期のものという。境内には磨崖仏が見通せるようにお堂が建てられている。

室生口大野駅から近鉄線で桜井駅に移動し、バスで聖林寺に向かう。聖林寺にはお目当ての十一面観音菩薩がある。

「聖林寺前」に降り立てば田園風景が広がり、高台に建つ聖林寺は閑静な佇まいの山寺である。