なんて素敵なお友だちなんだろう――。
そばで聞いている私は(……この会話セーフなのか)とハラハラドキドキしました。
――春香と修平は頰を赤らめて、駄菓子を入れる小さな赤いバスケットにせっせとお菓子を入れていました。店内にちょっとだけ気まずい空気が流れましたが、春香が駄菓子の入ったバスケットと百円玉を母に差し出すと、それを受け取りながら、母は修平に声をかけました。
「修平ちゃん! 春ちゃんは去年引っ越してきたばかりだから、優しくしてあげてね」
「おばさん、僕は男なんだから、女の子に優しくするのは当たり前だよ」と修平は即座に答えました。
修平がクラスでモテるというのも納得です。友だちの前で、照れずに母の言葉をしっかり受け止めていました。
母もそう思ったのでしょう。
「カッコいいね、修平ちゃんは……。春ちゃんも頼もしいお友だちができて、よかったね」
「おばさん、俺も頼りになるぜ」
「俺だって女の子には優しくしているよ」
他の子も会話に割り込んできました。
母は、「うんうん、みんな春ちゃんのお友だちになったよ、よかったね」とニコニコしていました。
(さすが、みかどのおばさん! 落としどころをちゃんと見極めているんだ)と私は感心していました。二人が気まずいままではかわいそうだし、学校でからかわれるのも気の毒でしたが、これなら丸く収まります。
「僕たち、これから『子どもの広場』に行くけど、近田も一緒に来る?」店を出る修平が、春香に声をかけました。
「うん……行く!」
そして、子どもたちは楽しそうに『子どもの広場』に走って行きました。
こんなふうにみかどのおばさんは、子どもたちのキューピットにもなり、ときには魔法の言葉で喜ばせておりました。