なぜなら、そこにいたのは・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・・・・・」

これでもかと全身に血を被った、緑髪の小さな女の子だった。

「「・・・・・・・・・・・」」

2人は「それ」を見ても、臨戦態勢に入ろうとはしなかった。

殺気は感じたが、それ以上に、どこか切なそうな、深い悲しみの色をした瞳が、印象に残ったからだ。

「・・・・・・・・・・・・・」

おぼつかない足取りで、少女は2人に近づこうとしたが・・・・・・・・・・。

バタン

糸が切れたように、力尽きるように、道の真ん中で少女は倒れた。

「「!!」」

ユウが真っ先に飛び出し、数瞬遅れて、シンも勢いよく続いた。

「この娘を、町の孤児院に連れていく。」

少女を抱き抱えると、ユウは真剣な眼差しをシンに向けて、そう言った。

「あんな顔を見せられて、放っておけるわけないよ。」

「わかった。」

「任せろ。」・・・・・・・・・と言い、シンが交代して少女を抱き抱える。

「お前より俺の方が速い。先に着いて待ってるから、後から来い。」

ヒュン

一陣の風が吹いた後、シンの姿は、気配も影もなくなり、綺麗に消えていた。

「・・・・・・やっぱり。不器用だけど、優しいんだよね。」

友人の頼もしさを改めて確認し、ユウは愛おしそうな表情を浮かべるのだった。

とある雪原の森林

時は少し遡る。

シンとユウの2人が、少女と出会うより前の頃。

ドスッ  ドスッ  ドスッ

森林全体が、醜い足音に戦慄していた。

ドスッ  ドスッ  ドスッ

その音の持ち主のことを、とりあえず「彼」と呼ばせてもらおう。

ドスッ  ドスッ  ドスッ

彼の姿形を、言葉で表すとするなら・・・・・・・・・。

「筋骨隆々とした牛頭人身の大怪物」

そんな表現が、これ以上ないくらいに似合っていた。

「・・・・・・勇者・・・・・魔法使い・・・・・潰す・・・・・・。」

魔王軍四天王、牛将のミウロス。

棍棒を握っている右手に力を込めて、ミウロスは鼻息を荒くする。

「・・・・・・・グラスト・・・・・倒されてしまうとは・・・・・・・情けない・・・・・・・・・。」

四天王は全員、見えない線のようなもので繋がっており、誰か1人でもいなくなれば、すぐに気づけるのだ。

「・・・・・・・俺は・・・・・・・油断などしない・・・・・・・グラストとは違う・・・・・・・・・魔王様が・・・・・・・・恐れるほどの2人・・・・・・・・・。」

プライドが高く、自意識過剰なグラストと違い、ミウロスは覚悟を決めて、2人を襲撃しようとしていた。

「・・・・・・・・? ・・・・・・・あれは? ・・・・・・・・。」

ふと前の方を見ると、1人の少女が歩いてくるのが見えた。

緑髪の小さな女の子だ。

とくに理由はなかったが、「殺そう」・・・・・・・と、ミウロスはそう思った。

それが魔物としての、彼の「本能」だったからだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

殺してやる。

ミウロスは本能の赴くままに、歩く速度を上げていき、徐々に少女との距離を短くしていった。

【前回の記事を読む】寒さに凍え、やせこけた体が…。少女の身に起きた不思議な出来事とは?