「アタイは話すことなんて何もないわ。仕事をしているわけでもないし、結婚もしていないもの」

ヘラは「恋人もいないの?」聞くと「もういないわ」と即答で答えた。

恋人といえば、さっきトラヴィスとマリッサの関係が恋人みたいだと話をしていたな、とトラヴィスを見てみたら、俺の考えを見透かしていたようにこちらを見てきていた。

「アタイは話すこと一つもないけど、マリッサならたくさん話題があるはずよ。マリッサもドランと同じ成功者といっても過言ではないはずよ」

「二人も成功者がいるなんてすごい」

ステファニーは成功者に目がないのかもしれない。毎日、成功者がステファニーのそばにいるのに。

「ドランの功績と比べるとウチはものすごくちっぽけに見えると思うわ」

「確かにいわれてみれば、マリッサの顔はテレビでみないわね。どうしてなの」

「ステファニーのいう通り、私は世間に顔を出すようなことをしてないの」

「マリッサは化粧品を取り扱う会社を立ち上げたのよ」

エマは自分のことのように誇らしげに語った。

「もしかして私が使っている化粧品かしら」

どうやら心当たりがあるらしく、ステファニーは目を丸くした。

「ええ、そのブランドは私が作ったのよ。他にもアクセサリーや服もプロデュースしてるわ」

マリッサは自分の名前をブランド名にしたため、ステファニーはすぐに気づいたみたいだ。俺は今までステファニーの使用している化粧品やファッションなんて全く気にかけていなかった。

【前回の記事を読む】せっかく良い雰囲気だったのに…。皮肉いっぱい込めて煽ってくるのはいつものあの人