「目玉だからこそ、皆がそろうまで待ってほしかったわ」
「ごめんなさい。つい、目の前に有名人が現れたものだから興奮しちゃって……。」
ステファニーも罪悪感を抱いている。マリッサは少し考えてから「かわいい顔で誤られたら許してあげたくなっちゃう」と隣に座っているステファニーに抱き着いた。トラヴィスは気持ち悪そうにそのやり取りを眺める。
「皆がそろったらもう一度初めから話すことにしましょ。いいでしょ」
ヘラの問いに「わかったそうしよう」ドランも同意した。
「話が聞けなかったのはここに来るのが遅かったせいだろ」
トラヴィスは譲らない。
「あなたの話から始めたらどうなの?」
風呂上がりのエマがリビングに立っていた。
まだ乾ききっていない髪の毛を下げているエマの服装が変わっていた。やがて、俺は服を貸したことをステファニーに伝えていなかったことを思い出した。
「エマさんね、初めまして。あなたのお洋服、私も持っているのよ。なんだか気が合いそうね」
なんて鈍感なのだろう。ステファニーには服を貸したことを、エマには全員友達と同等に接するようにしたことからトラヴィスの機嫌が悪い理由までを話した。
「トラヴィスの職場も興味深いわ。役員会と何があったのか話してよ」
エマも俺と同じくトラヴィスの謎に興味を持っているようだ。
「え、いや……」トラヴィスはエマから顔をそらしたが、次にマリッサと目が合ってしまい、目のやり場に困っている様子だ。
「何もないよ、とかいっといたら怪しまれることもなかったのにね。ますます怪しいわね」
トラヴィスのペースだった会話は一瞬でエマが取り戻した。さすが、昔からトラヴィスの扱いに慣れているエマだ。
「弱いな」とボソッと呟いたところ「誰だ」とトラヴィスが反応した。
「それじゃあ次にエマとウチの話でもしましょう」
マリッサが切り出した。