【前回の記事を読む】裁判所による、米国企業に都合の悪い訴えの門前払い…訴訟を諦めるしかなかった原告団

第1章 小さな政府と[民活]――民事訴訟を促して社会問題を解決

もし日本に同じ制度があれば原告の規模も賠償額もケタ違いになっていたはず

「証拠開示手続き」は被告となる東電やGEにとって応じるだけで大きな負担になります。提出する資料を精査するために弁護士を雇い、膨大な時間をかけて内容を確認しなければならないからです。

費用をかけるのであればいっそ裁判の初期の段階で和解をという判断になるかもしれません。また実際に「証拠開示手続き」の手続きに入ったとしても、被告に不利な証拠がぞくぞくと現れ、このままでは勝ち目はない、最後まで闘うリスクは取れないと、いずれにしても東電やGEが早期に和解の道を探る可能性は高くなるでしょう。

この規模の事故では刑事訴訟も免れません。東電とGEの経営者や役員たちは過失致死罪(Negligent Manslaughter)ほか多くの罪状で刑事訴追されることになるでしょう。

個人のみならず、会社としての東電やGEが刑事責任を問われることになるでしょう。被告は刑事上の和解である司法取引の道をたどる可能性が十分に考えられます。

このあたりは第4章「法理論より実利」(刑事)などに関連するので改めて触れていくことにします。

いずれにしても、もし日本に米国の「民活」のための数々の制度があれば、あれほどの事故を起こしながら責任はうやむや、負担を被害者や国民に押しつけ、国はいかにも何かやっているフリをしただけという現実とは、大きくかけ離れた結果になっていたことは間違いありません。